2011年02月21日

夜咄の茶事(お稽古茶事)

お茶を学ぶ者なら、夜咄の茶事というのはお茶事の最高峰、すごく憧れる茶事なんです。

以前西宮のお茶人さん宅の夜咄に招かれたのはもう4年も前になります。

当時は(今もってですが)未熟者ゆえ、手順を追いかけるのに精一杯で、その情緒を楽しむゆとりは正直ありませんでした。

あれからまあ、多少は勉強も、実践も修行はつんで、少しましになったかなあ、、と思います。

このお稽古茶事は裏千家の出版物を扱う○交社さん主催のもの。

まずは予習、予習。

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夜咄は、夕方から始まる茶事で、寒さ厳しい季節にのみおこなうもの、電灯の光一切なし。

手燭のゆらゆらする灯り、炉に熾る炭火、寒気の中にあがる湯気、、、そういったものを愛でるとっても趣ふかい茶事なんです。
短檠(たんけい:置燭台のようなもの)、手燭、膳燭、座敷行灯など、灯りの種類もいろいろ。

それだけに準備がたいへんで、巧者にならないとできない、といわれています。

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学生の頃から着ている無地・一つ紋、染め変えをしましたが、よくこれ着てますね〜。
これを着ていざ北の方の○交社へ。

昨年もお稽古茶事に行かせてもらいましたが、あの時はまだ兵庫県在住、遠ございました。
それがまあ、今度は地元でほいほい気軽にいけますものね〜!![E:happy02]


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入り口にお祭りしてあるのは水神さんでしょうか。
手を合わせて中へ。

今回の連客さんは総勢7名、どなたも正午の茶事なんてもうあたりまえにできます〜という感じの巧者ばかりとお見受けいたしました。(地元京都は私一人。なんと九州、四国からもおいでです。皆様、熱心!)

こちらにはビルの中とは思えない待合い、小間の茶室があるのです。


待合いで汲み出しをいただきましたが、この季節ならではの甘酒でした。
開始時はまだ陽の光がありました。
なので手燭の交換(亭主と正客が手燭を柴折戸のところで無言で交換する)はありません。

陽があるのに手燭を使う、というのはおかしく、あえて臨機応変に交換をしない、というのも働きだとか。
(かわりに後座入りのときに、交換がありました)

席入り、小間の中はすでに暗く、ゆらゆらする手燭の光のみ。
その影多き床の間に江雪宗立(江月宗玩の法嗣)の「黙」の墨跡が。

沈黙の黙。
黙っておれ、の黙。
今はなにもしゃべるな。

無言の中、この墨跡は心にひびきました。
なんて夜咄にぴったりな。

この席では短檠ではなく竹檠、竹でできた置燭台がおかれていました。
これはめずらしい。

一堂席におさまるとまずは「前茶」。
お稽古用の茶碗でさらさらと普通に薄茶を点てて、客はおもあい(一つの茶碗でまわしのみ)でいただく。
お寒い中をようおいでくださいました。まずは体をあたためてください、ということらしいです。

そして初炭。
炉のそばによって、炉中拝見。
あたたかい炭の火がなによりのご馳走。
まあ、それにしてもなんてきれいな下火!
火箸ではさむと、はらり、と外側の灰がおちるのが最高の下火だそうです。





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撮影禁止ですので、雰囲気だけでも、上記のテキストからちょいと拝借。

たっぷりの水で濡らした茶巾で釜肌を拭くとわあ〜と白い湯気があがり、これを「ご馳走」と茶人はいう。

そして炭点前がおわると小間特有の座箒。
この掃き方がわからず、本をみてものっていなかったので、じ〜っと凝視してものにしようと。
なにしろうちの茶室は(己を知らんというか)小間だもんで。



続いて懐石。
この日の懐石は三友居でした。

なにしろ蝋燭の灯りの中でいただくので、目ではよく見えません。
味覚だけがたよりの夜咄の懐石です。

向付がお魚ではなく、ふろふき大根なのにはびっくり。
蒸し物もお豆腐の中に貝柱などがはいっていたもよう。(目で確認できないんです〜)

さすが、三友居さん、上品なお出汁でとてもおいしかった。

千鳥の盃(客と亭主が盃のやりとりをする作法)もさせていただいたので、ご酒もけっこういただいたかな。

途中で膳燭が暗くなったので、和蝋燭の灯心を切らせてもらう、という経験もいたしました。
あれ、切るとまた明るさが復活するんですね。
日常生活の中で使わないものだから、とても新鮮な体験です。


夜咄では折敷もわびたものがよいので、真塗りの角盆ではなく、この日は溜塗りの丸盆。

この時の箸落し(食事終了を亭主に伝える作法)は向付と四つ碗の間に上から落とすのだそうです。
勉強になるわ。

紫野源水さんの上用をいただいて中立です。

この上用ふかふかで、中の餡の色が、暗いので不明。多分桜色ではないかと。
あんまり暗いので私のカレー色の着物もピンクに見えたそうですよ。


後座の合図の鳴り物は、夜咄では銅鑼ではなく、喚鉦をならします。
これがまた、「陰」なる音で、なるほど、夜咄にはぴったりの情緒が。

普通五点打つところを四点、ひとつうち残すのは、迎え付けをします、の合図です。
なので柴折戸のとこで主客、手燭の交換。

お正客の持つ手燭の灯りのみをたよりに連客は蹲居に進みますので、はぐれないようにくっついて歩きます。
これを「雁行」といいます。

後座のはじまり。
軸ははずされ、かわりに石菖(油煙を吸着するという植物。夜咄のお約束)
水指は信楽の種壺。(侘び具合がいい)
茶入は古瀬戸、銘を「閑居」。

濃茶の主茶碗は高麗茶碗の堅手。

茶杓はなんと宗旦!(無銘)

なんともいえない飴色で、優しい感じ。
これはもう、竹であって竹ではないものになっています。

濃茶をいただいたあとは、夜咄では続き薄がきまりなので、続いて薄茶を。

干菓子はあの注文のお菓子しか作らない干菓子で有名な伊織さんのもの。
薄焼きに梅餡をはさんだものと、蕨の有平糖。
いやあ、伊織さんの干菓子がいただけるなんて[E:lovely]

薄茶の後、亭主は一度席を終え、水屋から箱炭斗を持ち出します。
これが夜咄特有の「留め炭」。


炉中をあらため、炭、香を焚き、「どうぞごゆっくり」の意味をこめて。
客からすれば長居をせずに帰るタイミングの「立ち炭」になる、ということです。

一堂が退出したあとは、亭主は躙り口をあけてお見送りを。

このあと亭主は、本来は井伊直弼ふうに茶室にひとり座して「独座観念」する、、、というのがかっこいいですね。

退出後も電灯はつけず、しばし待合いでご指導いただいた先生にあれこれ、したい質問はつきませんでした。

帰りに電灯の光をみると、、、、
ほんとうに殺風景というか、いかに情緒のない灯りの中で現代人は生活しているのだろう、、とおもわずにはいられませんでした。

ほ〜〜っ!
[E:confident]

浮き世、俗塵をひとときわすれてすごすことができましたわ。

まあ、70くらいになったら、夜咄、自分でできるかしらねえ、、、、(遠い目)






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posted by しぇる at 23:35| Comment(20) | TrackBack(0) | お茶と着物・2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
しぇる様

うらやましいです
いいですね
特に、蒸したてのお饅頭
燈心の芯切りをされたとのこと
これはお稽古しないですね

路地行燈や置行燈はないのですね
そうなんだ云々・・・

冬になると、身内で炉に炭を入れ和ろうそくだけの明かりで
お茶を点てて遊んでいますがいいもんですね。
このときは、残念ながら古筆が掛けられません。
字が小さくて読めないのです。
掛物は墨跡か、大懐紙ですね
今回の墨跡が江月さんのお弟子さんとのこと
いま、僕の横にその江月さんの消息を掛けています。

「黙」
いいですね
心茶会のときの掛物もこの言葉でしたね
言わず語らずに真理を示す
話せばみんな方便になる
ということでしょうか

いい経験を重ねられているのが
本当にうらやましいです
Posted by 野中の清水 at 2011年02月22日 00:34
長いお稽古期間やのに、夜咄を経験させてもらったのは、一度だけでした。
 しぇるさんと同様、予習して臨んだんですけど・・・・
 一度や二度で、覚えられるはずもなく・・・[E:crying]
 しぇるさんのブログで「あーそんなこともあったなあ~」と思い出し、ひと時、別世界を感じさせてもらいました。

 mixi、やってはいますが、読むだけのために入っただけで、exblogと同じもですよ!アドレスお送りします。
Posted by 花咲おばさん at 2011年02月22日 11:36
しぇる様
夜噺ですか!すごいですねえ。
私も茶事に参加したいです。
Posted by ひいらぎ at 2011年02月22日 20:16
野中の清水様

はい、とてもよい経験でした。昔はこういう火の扱いは子供でもできたのでしょうね。今は便利になったのだかどうだか。
露地行灯はちゃんと出ていましたよ。
利休さんの時代はかなり照度をおとしていたようで、それを踏襲しました、と言っておられました。あれも幻想的な灯りですね。

心茶会の待合い掛けの「黙」は維摩経からでしたが、この席のはそのあとに小さい字で漢詩がついていたのです。
おぼえられなかったのですが、鳥が鳴いて人影はますますなくなった、、、という意味だったような。
私には、世の中へ不満や、せんのないグチをつい言いたくなる自分へ、「黙れ」と一喝されたような気がしたのです。
文句を言う前に、まずなすべきことをこつこつと黙って地道にやれ、というふうに思えました。
Posted by しぇる at 2011年02月22日 23:38
花咲おばさん様

mixiのコミュへのおさそいを早速お送りしました。是非ご参加ください。

夜咄がすらすらできるようになったら、もうおしもおされぬ「茶人」でしょうねえ。先生方でもようしません、という方が多いですもの。
なので素人の私たちはまあ、ぼちぼちと。
まずは雰囲気をしることからはじめればいいですよね?
Posted by しぇる at 2011年02月22日 23:41
ひいらぎ様

夜咄は亭主になるのはむつかしいですが、客としてはあの雰囲気を一度あじわうとクセになりますね。また機会があれば行きたいなあ。
Posted by しぇる at 2011年02月22日 23:42
うちの近くの先生はこまめにお家でお茶事をなさいます
先日もお多福さんで夜咄をしはりました
いつも4,5日に分けて少人数で
おまんも蒸かして[E:happy01]
Posted by kamesan at 2011年02月23日 07:34
いい雰囲気ですね。いつか私も参加してみたいです。
私は今期こちらの教室では、ご馳走につられて瓢亭の高橋さんの茶花教室に何度か参加しました。
やっぱり本当に良いものを体験したり、一流の方にお会いすることは大事だと実感しました。自分が今どの辺りにいて、これからどの辺りを目指していけるのか、自覚できますから。高望みはしませんが、その時その時で、実・学・道のバランスのとれたお茶ができたらなあ、と思います。
今はちょっと迷っているかなあ。
Posted by そらいろつばめ at 2011年02月23日 18:03
kamesan様

それすごい先生です[E:coldsweats02]
わあ〜、、、少しでもそんな風に近づきたいなあ。
Posted by しぇる at 2011年02月23日 22:43
そらいろつばめ様

私の場合少々頭でっかちになってます。
こうしたいという思いだけは一人前なのですが、炭の組み方一つ、自分でせよといわれるとあれ〜???だったり、、、
水屋道具をそろえながら、ほんまにこんなたいそうなこと自分でできるんだろうか、といささか不安になることも。
でもまず前に進まないと。失敗を繰り返しながらでもね。
またおつきあいください[E:coldsweats01]
Posted by しぇる at 2011年02月23日 22:47
今日、先生に来ていただいて3月にするお茶事の予行演習をしました。
当日は、ご住職様以外はみんな身内なのですが、ちゃんとできるか見ていただきました。
もうダメだしの連続、まあ仕方がないです。
本番はいつも失敗の繰り返しです。
それでも本当に楽しい。

しぇる様
是非、一度お茶事をやってみてください。
Posted by 野中の清水 at 2011年02月23日 23:16
野中の清水様

お茶事、、、それに向けてただいま鋭意準備中です。
いや、はたしてどこまでできるのか、まったく未知数ですの。どなたかにご指導いただきたいのですが、今の先生は習い始めたばかりだし、前の先生はちょっと遠いですから[E:bearing]
良い先生にお茶事のご指導までしていただけていいですねえ。うらやましいわ。
Posted by しぇる at 2011年02月24日 23:03
本格的な夜咄だったのですね。
うちの先生は、私が夫を亡くして2ヶ月ほどしたとき、「あなたはお役はしなくていいから、簡単な夜咄をしましょう。」と言ってくださいました。まだとても辛い時期だったのですが、そのときのほの暗いお茶室での、静かでどこか厳粛な雰囲気のお茶事と、先生の温かい思いやりにどれだけ励まされたことか。私にとっては心に残る最高のお茶事でした。
Posted by yuchi at 2011年02月27日 16:46
yuchi様

亡き人をしのぶ夜咄もあるのですね。
残された家族を暖かく包む闇と火。
そして思い出に包まれるのでしょうか。
なんだかもらい泣きしてしまいそうです。
そんな夜咄ができる方を達人とお呼びするのでしょう。
Posted by しぇる at 2011年02月27日 21:06
最後の写真の梅は前の家から
植え替えらえたものですか。
季節が巡ってくるとそれを教えてくれますね。
いま、うちの庭ではクリスマスローズが咲きはじめました。
Posted by 野中の清水 at 2011年03月01日 01:00
野中の清水様

そうです。
よく覚えていてくださいました。
枝をだいぶんはらったせいで、花の数は少ないですが、ちゃんと京都で初めての花をさかせてくれました。(まだ2分咲きくらい)
先日用事で宝塚にいきました。
庭はほとんど防草シートで覆われているのですが、すきまからクリスマスローズがけなげに咲いているのを見て、涙が出そうになりました。
Posted by しぇる at 2011年03月01日 23:28
伊織さんのお菓子は、二種10組2400円、三種10組3600円で、予約すれば買うことができます。私はお茶をしないので、最近はもっぱら俵屋吉富小川店の季節の色々なお干菓子が一個から買えるシステムを楽しんでいます。来客にもばらばらに買うと皆さんはしゃぎながら選んでくださいます。
おまんやさんは伊織さんの斜め向かいの友恵堂。先代の時から、ここでは素敵な京言葉に癒されてきました。今は娘さんが頑張っておられます。
Posted by Mariko Ishii at 2011年03月02日 22:25
Mariko Ishii様

ほんとにいろんなところをよくご存じで、びっくりです。
伊織さんのお干菓子は一度は使いたいです。一度飛び込みではいって断られて赤っ恥をかいたことがありますの[E:coldsweats01]
千家さんの近くの俵屋吉富さんの干菓子、楽しいですね〜。
小川店しかないんですよね、あの選べるシステム。
やっぱりあそこまでいかなくちゃ、、、
Posted by しぇる at 2011年03月02日 22:48
ごめんくださいませ。初めまして。ちかじか よばなしに初参加のババでございます。
 お茶は、学生時代京都の泉湧寺さんの辺りでお稽古に行ったきりですが、50年後の今ごろ、お茶に親しんでいます。
 分からないのに、お誘いをいただくと参加しています。先日は、昼の懐石に参加して座っていることが出来ただけでも喜んでいます。
 今日は、読ませていただきとてもためになりました。ありがとうございました。
Posted by 樋浦美喜子 at 2013年10月11日 14:15
樋浦様

おはずかしいです。もうかれこれ2年前の記事なので、われながらマチガイもあり、まだ未熟だったなあ(今も未熟)と。それなりに参考になればうれしいです。よき夜咄になりますようお祈り申し上げます。
Posted by しぇる at 2013年10月15日 21:08
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