2008年11月14日

NHKハイビジョン特集「杉本家 歳中覚の日々〜京の町家200年のレシピ」

NHKハイビジョン特集「杉本家 歳中覚の日々〜京の町家200年のレシピ」ご覧になられましたか〜?[E:happy01]

何回も再放送されている(地上波はまだかな?)ので、ご覧になる機会もあると思います。

杉本家といえば、京町家好きでこのお宅を知らない人はいないと思いますが、京都の町家の中でも最大級のりっぱなお家で平成2年に京都市指定有形文化財に指定されています。



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この写真は今年五月、綾小路通りを通りかかった時に撮ったもの。

かつては呉服を商っており、大勢の奉公人をかかえていた江戸時代からの大きな商家です。

江戸時代に、家での年中行事や日々の食事のきまりなどをしるした、和綴じの「歳中覚(さいちゅうおぼえ)」に即して今も生活する杉本家の人々(9代目当主夫婦と次女の節子さん、三女の歌子さん)

「歳中覚」に貫かれている精神は、質素倹約(しまつ、というやつですね)。贅沢は身にも心にも毒である、というポリシー。

食事も奉公人も主も朝夕はご飯と漬け物だけ。

1のつく日には魚がつく、8のつく日にはなにそれがつく、おせちのごまめは2匹、数の子は5きれ、というようなすごく細々したことまで記載されているのです。

質素だけれども、季節の野菜、土地の食物を上手に取り入れてきたといいます。

もちろん、現代の生活ですから、現代風の食事も供されているはずですが、節目節目の年中行事では「歳中覚」にのとった食事をこしらえてはります。

大きなお家で、分限者であったはずですが、この精神にのとって、家の作りも、しつらいもむしろ質素ですが、それゆえにかえってすがすがしい感じです。



印象に残ったのは、町家のりっぱなおくどさんのある走り庭の台所が現役で使われているところ。

火はおくどさんでなくごく普通のガスコンロを使われていますが、季節季節の料理を旧家らしい年季の入った鍋で母娘が仲良く手分けして作られています。

おだしもちゃんと鰹節と昆布でとって、決して粉末ダシの素なんか出てきません。

胡麻あえも胡麻を胡麻煎り器で煎って、すり鉢ですりつぶしてこしらえてはります。

昔ながらの丁寧な台所作業です。私の母の世代まではふつうにやっていたことですが、自分の迅速だけがとりえの料理をちょっと反省。

漬け物も、当主夫人が大きな樽を毎年だしてきて、ご自分で糠を調整して1年分の樽一杯の大根のぬか漬けをされます。

もう一つ印象に残ったのは、庭に先代夫人が植えた柚の木から収穫した柚でゆべしを作るところ。

一つ一つ丁寧に中をくりぬき、調合した白味噌と道明寺粉とあわせ、蒸してあとは戸外の寒風にさらして、お雛様の頃に食べるのだそうです。

ゆべしが自分で作れることにも驚きましたが、こういう暮らし、あこがれます。

まあ、憧れだけで、いまのライフスタイルでは、こんなにゆったり時間はすごせないし、寒さに対する根性なしで真冬にさぞ冷たいだろうと思われる走り庭の台所で料理することは私には不可能ですけど。



さしもの大店も時代の波にのまれて、この家は維持できなくなる寸前でしたが、その建築的・文化的・歴史的価値が高く評価され、文化財指定を受けることで生き延びることができたのです。

指定を受けることで、ある程度一般に開放しなければならないなど、制約は色々あったと思います。

それでも指定をうけて家を生き延びさせたのは、よく決心されたことだと思います。

「なんとか生き延びたい」という家の声が聞こえた、と当主夫人は言っておられました。

このくらい古い家になると、そういうことがあっても不思議ではない気がします。

次にこの家の10代目当主になる決意をされた次女の節子さん、ほんに、はんなりした中にもきりっとしたまことの京女でありますなあ。

苦労も多いかと思いますが、是非この家を守っていってもらいたいものです。

きっと京都だけでなく、日本の宝ですから。

プライベートにつっこみすぎた話ですが、11代目はどうなるのかちょっと心配したりします。

住む人がいなくなって、建物だけが残って資料館みたいに公開されるのではなく、人がいて、生活している家であってこそ魅力がある、、、そういわれる意味がわかったような気がするので、次世代へそのまた次の未来の世代へこの活きた家が、受け渡せますように。


posted by しぇる at 01:58| Comment(14) | TrackBack(0) | 町家ウォッチング | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
とにかく、11月のNHKハイビジョンの京都特集は凄いですね。私は、「西本願寺~桃山の美と王朝の雅~」に一番感動しました。
Posted by S&Y at 2008年11月14日 05:46
初めまして♪『町屋』で検索していたら〜こちらのHPにたどり着きました♪今は離れていますが…京都は故郷なので♪シェル様が学生時代に過ごされた頃まで住んでいました(たぶん年齢も近い!)ので〜老後は♪帰りたいと思っている今日この頃です♪
Posted by マロ♪ at 2008年11月14日 11:14
S&Y様

残念ながら、見損ねたテーマもいくつかありますが(西本願寺のもそう)、今から放送分は全部録画しておこうと思っています。
あと、何年か前の再放送ですが「よみがえる源氏物語絵巻」、すばらしいです。徳川美術館で復元模写が公開されているとき、行けなくて、図録だけとりよせました。こういうのはNHKでなくてはできませんね。
Posted by しぇる at 2008年11月14日 20:52
マロ♪様

初めまして。コメントありがとうございます。
老後は京都で、と思われている方は存外多いようです。それだけ他の町にはない特異な魅力があるんですねぇ。
京都が故郷でいらっしゃるんですね。離れてみて初めてわかる京都の魅力ってありませんか?このNHKの特集を見て、京都への思いはますます強くなっている私です。
また、時々コメントいただけると嬉しいです。[E:happy01]
Posted by しぇる at 2008年11月14日 20:57
大阪にもそんな古い家がありました。
保存動きが高まる前だったので残念ながら取り壊されました。
取り壊される前にある映像作家の方がフィルムに残されていたのを見る機会があり
失ったものの大きさを思い知らされました。
戦後のドイツでは早くから古いものを保存する方向で戦災にあっているはずなのに
中世のままの姿で残る町などが多いものです。
日本もやっとその方向に進んでいることに穏やかな気持ちになります。
そして同じ過ちを今繰り広げる他のアジアの国に想いを馳せてもいます。
Posted by ヘルブラウ at 2008年11月14日 21:41
ヘルブラウ様
私は、京都の景観問題について、京都に京町屋が残ることで経済的なメリットを受けているJR東海や京都ホテル業界などが、維持コストや不便さを忍んでいる京町屋の所有者に資金的に還元するメカニズムを確立しないかぎり、経済原則から、京町屋はどんどん減っていくのではないか、と危惧しているしてますが、ドイツでは、どうなっているのでしょう?ご存知でしたら教えてください。
Posted by S&Y at 2008年11月15日 02:01
↑「危惧していますが、」に訂正
Posted by S&Y at 2008年11月15日 02:03
S&Y様、

私が住むハンブルクでは市が個人所有の家(大きな館ような)も保存の価値を認めて修理費とかの経済的援助をしています。知人にそういう家の所有者がいて聞くところによるとそうなると家を勝手にいじることができなく人に貸したり、売ったりすることなどできなくなるようです。

しぇる様もご存知のように問題多いブログ「グレーは淡青」ではありますが良かったらお訪ねくださいませ。
Posted by ヘルブラウ at 2008年11月15日 06:21
ヘルブラウ様
ご解答どうもありがとうございました。
どうも、京都の町屋の保存については、受益者(京都に町屋があることで受益している者、観光客や観光産業)とコストの負担者(10階建てのビルに立て替えるのではなく、平屋ないし2階の町屋のまま使い続ける機会損失も含め)が一致していなさすぎる(だからどんどん減る)と思っています。これに対処するには、景観条例法的効力のあるもので強制するか、自由にしておくなら保存することが経済的に所有者にとってオトクである枠組みを作る必要がある、と思います。
しぇるさんや麻生圭子さんのように、町屋に住むこと自体に(不便さを含め)価値を見出すことのできる人は、世の中に、哀しいことですが、そう多くはないはずです。
Posted by S&Y at 2008年11月15日 07:37
うーーん。難しい問題ですが、経済面からのみ申し上げると、
町家は結構、リーゾナブルです。うちも築80年ほどの京町家ですが・・・

第一、固定資産税と都市計画税がびっくりするくらい安価です。
100年単位で考えると、維持・修繕にかかるコストもまったく納得にいく金額です。

問題なのは、大手資本が入ること。観光資源にしようとすること。
(気軽に使えない)文化財にしてしまうこと。職住分離になってしまうこと・・・ではないでしょうか?

先日、しぇるさんにもご参加いただきましたが(深謝!)、
ナショナルトラスト保護資産の駒井家でイベントをしました。
ここは、「みんなで楽しんで使って守ろう文化財」ということで、ガラスケースの中に
文化財を閉じ込めてしまうことなく保存をしようということで、非常によいことやと思いました。
Posted by あまね at 2008年11月15日 14:05
ヘルブラウ様、S&Y様、あまね様

それぞれのお立場からの町家、景観保存についてのお話、おもしろく拝見させていただきました。
あ、まず最初にことわっておきますが、私は麻生圭子さんみたいに、不便を楽しむ町家暮らしができるほどの根性はありませんので、同等にいわれると穴があったらはいりたい口ですから。

「京都に京町屋が残ることで経済的なメリットを受けているJR東海や京都ホテル業界などが、維持コストや不便さを忍んでいる京町屋の所有者に資金的に還元するメカニズム」
というのは斬新な考え方だと思いました。
たしかに町家のある風景を楽しませてもらっているのに、お住まいの方の不便さや維持していくことの大変さはおしつけたままでいいのかな、と考えたことはあります。ただ個人でできることはほとんどありませんので、S&Y様がおっしゃるように維持費の補助などの、行政の力を借りなければならないでしょう。
ただ、神社仏閣など他にも観光資源があるので(ふつうの観光客は町家よりもこちらの方を優先すると思う)町家の観光資源としての価値はやや見えにくいような気がして(町家がなくなっても、金閣や清水めざして結構観光客は来ると思う)、行政がどれだけ町家保全に本腰をいれてくれるかわかりません。ホテル業界も然り、です。
実際町家にお暮らしのあまね様は、私たちが想像するほど生活に不便を感じておられないですよね。いままであたりまえのように住んできたし、別に維持するのたいへんとちがうよ、と思っておられる町家暮らしの方も多々おられると思います。補助をもらってへたな制約をうけるよりは、新しい機能も付加しつつ、気楽に暮らす方がええ、と思われる方も多いでしょう。お上からの押しつけはなかなかむつかしいように思います。
北京ではオリンピックのためにすごい勢いで伝統的な四合院の建物や胡同(フートン)が失われました。中国ではお上が力業でねじふせるので、この失われた物の価値が再発見されたときもまた、力業で復旧できるんじゃないでしょうか。一党独裁の強みですね。

京都は、、、一度こわされた町家はもどりませんが、せめて新たに建てられる建物が無機質な、あるいはとっぴな建物やまわりの景色になじまない中途半端な洋風のものではなく、新たな町家とでもいうべき風情のあるものにする、という規制でもつくってくれませんかね。

とりとめのないレスになってしまいました。おつきあいありがとうございます。
Posted by しぇる at 2008年11月15日 23:04
あまね様
実際に、町屋にお住まいの方の貴重なご意見参考になりました。
しぇる様
うまく総括頂きました。明治維新以降もし京都が古いものだけを守る街であったら、奈良に近いイメージの町になっていたかもしれませんね。しぇるさんも私も京都の都市的側面も好き、というか、評価して移住しようと考えているわけですから、この問題、相当複雑かつデリケートですね。
Posted by S&Y at 2008年11月16日 00:38
みなさま!

うちは古い家に暮らしているというのに加えて、町家専門の不動産屋をしているものですから、
その両面でいろいろ思うことはあります。

正直なところ、ブログ等には書けることと書けないことがあります(その辺のところは、オフ会とか、
風の会の例会に来ていただければ…と存じます)。

ただ、いつも申し上げていることは、

京都を明治村にはしたくない!!   ということです。

人の営みがない町は死んだも同然、ただのテーマパークです。


ただ単に保存を目指しても、保存することが困難なクォリティの町家も少なくありません。
何が何でも保存すればいい・・・とは決して考えておりません。

京都はここ1200年以上、ずっと都市でした。
京都の100年後、200年後の将来を考えるとき、どうすればよいのか…これを一番に考えて
いきたいと思うております。

余談になりますが、
今までブログにはあんまり硬い話は書いてこんかったんです。

でも、今回のみなさんのコメントを読み、少しは書こかなぁ…と。

以前エステイト信のサイトにはそれなりに書いていたのですが、そのことに関わる方から
該当文章の取り下げをお願いされたりして、人間関係もありまして現在は削除しております。
むつかしなぁ。。。  [E:moon3]
Posted by あまね at 2008年11月16日 10:52
S&Y様 あまね様

京町家、景観保全に関して、ずっと京都で町家に住んでおられ、プロとしてそれに関わっておられる方と、いずれ移住しようというまでに惹かれる京都の魅力について客観的、論理的に検証しておられる方のご意見お伺いできて、このブログ、やっててよかったなあ、と思いました。
自分の意見ははなはだ消極的で、主観論に終始していますが、これから京都市民になるにあたって、ずっと考えていきたいテーマですね。
Posted by しぇる at 2008年11月16日 21:32
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