2011年04月29日

生誕120年河井寛次郎〜生命の歓喜

かつてある美術商のお店で河井寛次郎の茶碗を見たことがある。

信楽のような土肌に赤・緑・黒の色釉がたたきつけられるように刷かれていて、とても迫力があった。

、、、、で、値段を見て沈黙。
ゼロがひとつ多いよなあ。

河井寛次郎は柳宗悦とともに民藝運動の中心的存在であり、民藝とはもともと名もない職人がつくる生活のための器や道具にこそ美が宿る、というスピリットだったはず。

なのに無名どころか、大家になってしまって、河井先生、きっとあの世で苦笑いしてるんじゃないだろうか、と思った。

でも、現在、高○屋で開かれている「生誕120年河井寛次郎〜生命の歓喜」展をみて、それは違う、、、と思い直した。

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展示作品は

1)若い頃、彗星のごとくあらわれた天才といわれたころの精緻な作品群
2)民藝をおこしたころのプリミティヴなエネルギーを感じさせる作品群
3)晩年のもっとつきぬけた、陶器のみならず木彫、金工などもふくめた作品群

に分けて展示解説されている。

この2)の時期の頃でさえ、彼の作品のもつエネルギーはもう「民藝」を越えている、と思った。

器はどれも肉厚。
鉄釉、辰砂、呉須を駆使した伸びやかな具象のような抽象のような絵付け、筒描き手法の盛り上がった絵付け。
時にはみたこともないような不思議な形。

それでも、これにはこんな料理を盛ったら、こんな花を活けたら、と日常で使いたくなるような器たち。

しかもどれも暖かくて、民藝の骨子のひとつである形容詞、「健全」。
(そうか、健全な器ってこういうものなんだ、とわかったような気がした)

中でも小皿や、盒子(ごうす:香合になりそうな小さなふた付き入れ物)がとっても魅力的で、ひとつほしいなあ、、、と。
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ちなみにこれは、会場のショップで購入した、この本の裏表紙。


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この本には展示されていた作品のほとんどが載っているので、あとで見返して、なおいいなあとの感を深くする。

この表紙の壺は私が見て、ほしいなと思った茶碗と同じ時期の作品のようだ。雰囲気がよく似ている。
そして、李朝の十二角小盤(ソバン)に載っている様はどきどきするくらいカッコイイ。


河井寛次郎が新聞に載せていた「いのちの窓」というカット絵と箴言のような言葉の数々も展示されているのだが、そのあまりに哲学的なことにも驚く。

「深い精神性の持ち主」と解説されているが、まことにその通りだと思う。

どれもポジティブ。
人生への肯定感にあふれていて、読む人にどれだけ元気をあたえてくれるだろうか。

河井家には訪れる人が絶えなかったそうだ。
人生に向き合う覚悟と知性をもった人間は魅力的だ。
そんな人のまわりには気持ちのよい人間関係ができる。
そんな中で、濱田庄司、富本憲吉、棟方志功などとの交流も深まっていったのだろうか。


  新しい自分が見たいのだー仕事する

  おどろいている自分におどろいている自分

  この世は自分をさがしにきたところー居たか、居たか この世は自分をみにきたところ

  この世このまま大調和

  なんといふ今だ 今こそ永遠 



この世は自分を、、、で「無門関」の「主人公」を思い出す。

なんといふ今、、、過ぎ去ったあの時が貴重な時間だったとあとで気付く。「今」の大切さが凡人にはなかなかわからない。

そして、「暮らしが仕事 仕事が暮らし」といえる仕事に巡り会うことができた彼は、きっと幸せな人だったのだろうと思う。





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「いのちの窓」のカット集をシールにしたもの。
こんなものを買いました。


    *   *   *

生誕120年河井寛次郎〜生命の歓喜
高島屋京都店グランドホールにて
5月5日まで


posted by しぇる at 00:08| Comment(4) | TrackBack(0) | お茶と着物・2 | 更新情報をチェックする

2011年04月26日

西陣・織成館

雨宝院から西に歩くと浄福寺通、通称大黒町石畳のこみち。

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地元の方の心意気で、新たに作られた西陣らしい石畳です。

この通りに大きなスペースをしめる染色工芸展示館織成館があります。



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何度か前を通ったことがあり、着物を愛する者としては気になる存在だったのですが、なかなか行けず。
この日はひどい通り雨にあったこともあり、中へ。

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こちらは堂々たる西陣織屋建の京町家です。

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西陣帯製造業「渡文」さんの初代の方の店舗兼住居として昭和11年に建てられたもの。
ただし、近年展示館にするにあたっていくらか改築されています。


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でも1階の奥座敷は当時のままだとか。
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こちらではお菓子とお茶をセルフサービスでいただけるので、すっかりくつろいで、この大町家の主になった気分が味わえます[E:coldsweats01]


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坪庭は枯山水、、といった感じ。
(高そうな貴船石〜)

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奥座敷から店の間をのぞむ。


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ミセの間の一画にショップがあって、ここで鞍馬口の唐紙グッズのお店、かみ添さんのポストカードを発見。


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火袋フェチにはたまらん、垂涎の準棟纂冪(じゅんとうさんぺき)。

かつての西陣織り元のだんさんの経済力がどのくらいのものだったのか想像できるようです。





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こちらは2階の展示室。
アンティークの着物や帯などが展示されています。

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2階の床の間はシンプルにみえますが、意外とこまかいところに凝っているんです。
欄間はツボツボの透かし、床框は竹。

こちらは奥様がお使いだった部屋でしょうか。

この2階の渡り廊下をわたると、その先は帯の渡文さんの機場になります。
この日は休日なので機(はた)はお休みですが、工場長さんが実際に機をうごかして説明をしてくださいました。

(工場の写真はNGでしたの)

画像ではよくみるものの、実際の織機を目の前で見るのははじめて。

こちらでは能楽の衣装を納品されているとのことで、能衣装に使われる唐織りをみせていただきました。
唐織りは着物好きの方ならよくご存じかと思いますが、模様の部分がまるで刺繍でもしたように盛り上がっている織り方です。

機織り中のものは地模様が七宝つなぎで、そのうえに蔦の葉の唐織りがはいるのですが、地模様と、浮き模様を同時に織る、、とは知りませんでした。びっくり!
まるで魔法のようです。


かつてはジャガードの紋紙(パンチで穴を開けた厚紙)で模様をコントロールしていましたが、現在ではそのデータをフロッピーにいれて操作するとか。

ジャガードのなかったころはどうしていたのか?とお聞きすると、人間が機の高いところに登って糸をコントロールする、人間ジャガードだったとのこと。
気の遠くなるような入り組んだ作業だったでしょうねえ。
西陣の帯は値打ちがあるはずだわ。

目にも止まらぬ早さで飛ぶ杼(ひ:シャトル)の動きも初めて間近で見て感動。

機場のおとなりに商品が置いてある部屋もあって、目の正月をさせていただきました。
渡文さんはどちらかといえば、色数、彩度をおさえたシックな帯がほとんどです。

きもの雑誌でモデルさんが一度締めたために、破格のお値段になっているものもあって、若干心が動きましたが、ガマンガマン。

そしてめったに拝見できないものも見せていただきました。





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山櫨、蘇芳、などの草木染めで再現された「黄櫨染(こうろぜん)」。
高貴な方にのみ許された袍(ほう:衣冠束帯の衣装)の色目。

特に真ん中の黄土色は黄櫨染の御袍といって、天皇だけに許される絶対禁色なのだそう。

なんといってもビックリするのはこの糸に電灯光をあてた瞬間。



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紫系の色にかわるんですよ〜[E:coldsweats02]

化学染料では絶対起きない現象だそうで、室内と太陽光の下ではまったく違う色に見えるのです。

たしかに、やんごとないお方にふさわしい染色なんですねえ。

かくして、着物や帯ひとつひとつにかかっている気の遠くなるような手間を思えば、大事に大事に着たいものです。




いろいろ勉強させていただき外に出ると、、、

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さきほどの雷雨がうそのようにからりと晴れた石畳の道でした。

気持ちがよいのでそのまま東へ足をのばし、堀川通りをこえると表・裏千家のある寺之内。

ここまでくると素通りできない俵屋吉富さんの茶ろんたわらやさん。

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抹茶に俵屋吉富の上生菓子、、、がいつもの定番なんですが、この日は季節限定のこちらを。

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釜あげ餅。

お湯の中にうかぶお餅を、右手の醤油蜜や抹茶、きな粉、粒あんなどにつけていただくというもの。
特にこの醤油蜜、おいしかったわ〜。

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宝鏡寺の白壁のうえには気持ちの良い緑が生い茂って、早くも次の季節の到来を予感させるようでしたよ。

Oh! Brisk!
posted by しぇる at 21:00| Comment(14) | TrackBack(0) | 京都めぐり1 | 更新情報をチェックする

2011年04月25日

今日の京の桜〜西陣・雨宝院

智恵光院通と五辻通が交わる付近は、紋屋町とよばれます。

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紋屋町は西陣の糸屋町八町のひとつで、天皇・皇族などの高級紋織物を織る紋屋さんがいて栄えた町内だそうです。
かつては六家あった紋屋も今では三上家だけ。この三上家の路地は、「職人長屋」と呼ばれて陶芸家、建築家などのアーティストが入居されています。

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あら、TVで見たことある、、、と思われた方、正解です。
ここ、京都もののドラマによく登場する場所なんです。

ここの長屋の住人さんもけっこう入れ替わりがあって、2年前に来たときとまた違った方が入られているようで、、、

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こちらはずっとかわらない蜂蜜専門店ドラートさん。
残念ながらお休み。

まあ、この時は雷鳴を伴う大雨だったんだもの。


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表札も焼き物、おされね。

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奥から長屋の門の方をみたところ。
雨の風情もまた乙なもの。
(雷さえなければね〜、コワイコワイ)

長屋のお向かいのりっぱな町家は、以前はこの長屋の中においでだった遊墨漫画家 南久美子さんのギャラリー。
(ご主人の友禅着物絵師、南進一郎さんに付下げを作ってもらったことがあります。→

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いやあ、りっぱな町家やわあ[E:lovely]

さて、三上長屋をあとにして、お目当てはこちらの遅咲きの桜。


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西陣聖天こと雨宝院。
(京都市上京区智恵光院上立売西入る聖天町9-3)

音の響きもゆかしい、うほういん。
その名の通り、雨の日の訪問になりました。







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門を入ってはっと息をのむ桜吹雪。
(コンデジでは再現できていませんが)

はらはら、はらはらと雨とともにとめどなくおちてくる花びら。
雷鳴にもまけず、ここへ来てよかった。



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雪の如く、地面に、石畳に積もる花びら。
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真っ赤な椿の花にもふりかかる。

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起源をたどれば平安時代にまでさかのぼれるお寺だそうですが、以前桜以外の季節に来たときには他にだれもいなくて、静かでひっそりした印象でした。

地元の人しかしらないのでは、と思える小さなお寺がかくも有名になったのは、近隣のひとたちがボランティアでお世話しているこの桜ゆえなんですね。




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丹精のたまもの。
雷雨にもかかわらず、何人かのかたがシャッターをおしておられました。


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入り口を振り返ってみる、南接する本隆寺の土塀もみどころの一つです。

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境内よりも外からの方がよく見える御衣黄(ぎょいこう・薄緑色の桜)もお忘れなく。

今日の京都は里桜があちこちで盛りをむかえています。
これがおわると京は初夏に向かって姿をかえていきます。

そういえば、今年初のツバメを私も見ました。
posted by しぇる at 00:09| Comment(6) | TrackBack(0) | 京都めぐり1 | 更新情報をチェックする
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